和紙が紡いだマスキングテープの物語
マスキングテープと聞くと、百均の世界ではカラフルな文具を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、その誕生は工業の世界にあり、その中にあって「和紙」が重要な役割を果たすことで、まったく新しい進化を遂げました。
工業の世界から生まれた「Washi Tape」
マスキングテープは海外で誕生し、自動車塗装や建築現場で使われ始めました。当時のテープは性能に課題があり、剥がれやすかったり、跡が残ったりと、現場を悩ませていました。
そんな中、日本の技術が光を放ちます。1962年、岡山県倉敷市のカモ井加工紙が、「和紙」を基材としたマスキングテープを開発しました。和紙の薄さ、強靭さ、水に強いという特長が、テープに「貼りやすく、剥がしやすい」という相反する性能を高次元で両立させました。この和紙製マスキングテープは、特に自動車塗装の現場で絶大な信頼を得て、日本の職人技を支える存在となっていったのです。
和紙が彩るデザインの世界へ
工業用として広く使われていた和紙製マスキングテープですが、用途が広がるきっかけは意外なところから訪れました。2000年代後半、カモ井加工紙の工業用マスキングテープの魅力を知った3人の女性が、「もっと色や柄のバリエーションがあれば」と提案したのです。
このアイデアから生まれたのが、今や世界中で愛されている「mt」シリーズです。
和紙特有のやわらかな風合いと豊富な色柄、そして「貼ってはがせる」手軽さから、マスキングテープは瞬く間に文具や雑貨として人気を集めました。スクラップブッキングやデコレーションなど、使い方は無限に広がり、世界中で「Washi tape」として親しまれるようになりました。
日本の伝統素材である「和紙」が、工業用品としての機能性を高め、さらにはデザインの可能性を切り開いたマスキングテープ。その物語は、技術と感性が融合することで、新たな価値が生まれることを教えてくれます。
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